東京地方裁判所 昭和39年(ワ)366号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔争点〕原告は昭和三五年七月三日、当時自創法の規定により国に買収されていた本件土地について、右買収処分が取消され、被買収者であつた被告にその所有権が復帰したときは、代金二〇万円で被告からこれを買い受ける旨の、停止条件付売買契約を締結した。そして昭和三六年四月頃本件土地の買収処分が取消され、同年八月一一日被告のため所有権取得の回復登記がなされ、停止条件が成就したが、被告が所有権移転登記に応じなかつたので、原告は昭和三九年一月九日仮登記後仮処分命令を得て、右売買による所有権移転請求権保全仮登記を経た。ところが本件土地については、右仮登記に先だち、昭和三七年一一月二二日付で訴外大森伊八のため売買予約による所有権移転請求権保全仮登記が経由されていた。そこで原告は、被告に対し代金二〇万円と引換えに右仮登記の本登記手続を求めたが、同時に、右先順位の仮登記について本登記がなされるときは原告の右請求は執行不能にならざるをえないとして、執行不能の場合の代償請求として本件土地の時価相当額を損害賠償として併せ求めた。
右代償請求の許否について、判決は次のとおり判示している。
〔判決理由〕「右執行不能の場合との用語は必ずしも正確な意味を表現しているものではないけれども、その主張する請求原因から考えると、その趣旨とするところは、被告は本件土地につき本件売買契約の後に訴外大森伊八との間に売買の予約をなし、それを原因として、原告のための前記仮登記より先順位の所有権移転請求権保全仮登記を経由しているから、若し右先順位の仮登記の本登記がなされるときは、原告は本件土地の所有権をもつて右本登記を経由した第三者に対抗することができなくなり、本件土地売買契約は履行不能となるから、被告に対し本件土地の時価相当の損害賠償を求めるというに在る。しかして、このような売買を原因とする登記手続を求める給付の訴に併合して代償的給付の訴を提起することはもとより許容されるものである。本件土地につき、昭和三七年一一月二二日東京法務局調布出張所受付第二〇五九四号を以て訴外大森伊八のために同日付売買予約を原因として所有権移転請求権保全仮登記がなされていることは当事者間に争いがなく、被告本人尋問の結果によると、被告は訴外大森伊八に対する債務の担保の趣旨で右売買予約をなし、現に残債務金一一〇万円位があることを認めることができる。そうすると右先順位仮登記の本登記がなされる恐れがあり、そのときは、原告は本件土地の所有権を以て右本登記を経由した者に対抗し得ず、たとえ原告のための前記仮登記に基く本登記がなされても、その登記は当然抹消されるものであつて、本件土地売買契約は右先順位仮登記の本登記がなされたとき履行不能となるものといわねばならないから、原告は被告に対し本件土地の本件口頭弁論終結時(昭和四〇年二月二〇日)の交換価値相当額の損害賠償を請求する権利が生じ、右請求権は即時確定の利益がある。……したがつて、前記先順位の仮登記の本登記がなされたときは、被告は原告に対し右金一、〇五四、〇〇〇円から本件土地売買代金二〇〇、〇〇〇円を控除した金八五四、〇〇〇円及びこれに対する右本登記のときより完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払をなすべき義務があるから、原告の代償的損害賠償の請求は右限度において理由がある。(西山要)